転売業者の場合 令和2年消費税改正
令和2年の消費税の改正により、居住用賃貸建物を取得した際の消費税の控除(いわゆる消費税還付スキームというものです)が取れないこととなりました。
では、転売を目的とした、再販業者の場合、この改正により、どういった影響がでるのでしょうか?
(前提として、消費税の課税事業者で、課税期間中の課税売上高が5億円以下、かつ、課税売上割合が95%以上のケースです)
(取引の前提)
第1期目に物件を仕入た時の取引
建物1.1億円(消費税1千万円を含む)、土地1億 合計2.1億円で物件を仕入れる(住居は未入居で転売目的で取得)。
第2期目に物件を売却した時の取引
建物2.2億円(消費税2千万円を含む)、土地2億円 合計4.2億円で売却
(改正前の場合)
第1期目の処理
仕入に係る消費税1千万円の控除を取って(*仕入税額控除)、1千万円の還付を受ける。
*仕入に掛かった消費税の控除を取ることを、仕入税額控除と言います。
第2期目の処理
売上に係る消費税2千万円を納付する。
合計 第2期目に支払った2千万円-第1期目に還付を受けた1千万円=1千万円の納税
(改正後の場合)
第1期目の処理
住宅用建物については、仕入税額控除はとれない。
第2期目の処理
売上に係る消費税2千万円を納付する。
合計 支払った2千万円-0円=2千万円の納税
このままでは、転売業者さんは、改正前に比べて、消費税を1千万円多く納税することになります。
ここで取得した事業年度を含む3事業年度内に譲渡した場合には、下記の調整計算が入ります。
加算する消費税額=居住用賃貸建物の仕入時の消費税×(A)
(A)=【居住用建物取得から売却までの賃貸料収入(課税分)+居住用賃貸建物の売却金額】÷【居住用建物取得から売却までの賃貸料収入+居住用賃貸建物の売却金額】
今回の例では、1千万円×(0円+2億円(税抜)÷(0円+2億円(税抜))=1千万円が売却時である第2期目の仕入税額控除に加算されることになります。
合計では、第2期目に支払った2千万円-第2期目の仕入税額控除1千万円=1千万円の納税となり、結果的に改正前と同じになりました。必ずしも同じ結果となるわけではありません。
(まとめ)
今回の改正は、還付の抜け穴を根本的に防ぎ、同時に問題となっていたリフォーム再販業者さんの消費税の問題(ムゲンエステート 消費税で検索してみて下さい)も解消された素晴らしい改正だと思います。
ただ、この調整計算は3事業年度内(1事業年度目の末に買った場合は、実質2年間になってしまいます。)に限定されているため、長期の在庫として残ってしまった場合には、この調整計算は行われず、仕入税額控除が取れないため注意が必要です。
(以前、課税事業用で購入し、その後、居住用(非課税)に変更した場合の調整が条文上無いと記載していましたが、従来からの制度である消費税法34条で補完されておりました。お詫び申し上げます。(2021.2.10追記))
*そのほかにも、居住用を非居住用に転用した場合の調整計算の改正なども行われています。
話をわかり易くするために、細かな要件や説明は省いていますので、実際の取引の際には、税理士にご確認下さい。
消費税法改正のお知らせのⅡが今回の内容です。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/r02kaisei.pdf